建物再建築価格の計算方法を解説

建物の再建築価格は固定資産税の算定や保険金額の設定において重要な指標となり、正確な計算には構造や仕上げ材、築年数などの要素を総合的に評価する必要があります。

本記事では再建築価格の具体的な計算方法と注意すべきポイントについて詳しく解説します。

INDEX

建物再建築価格の算出方法

建物再建築価格の算出には複数の方法があり、それぞれに特徴があります。構造別の基準単価を用いる方法から、建築時期や価格変動を考慮した計算方法まで、目的に応じて適切な手法を選択することが重要です。

再建築価格の目安

再建築価格には構造別の基準単価が存在しており、建物の構造によって価格が異なります。

構造再建築価格の目安
鉄筋コンクリート造20万円/㎡
重量鉄骨造18万円/㎡
軽量鉄骨造15万円/㎡
木造15万円/㎡

この表から分かるように、より堅固な材料で建設される建物ほど再建築価格は高くなる傾向があります。

例えば鉄筋コンクリート造で床面積1,000㎡の建物の場合、20万円×1,000㎡=2億円の再建築価格となります。

ただしこの価格はあくまで目安であり、金融機関によって設定単価は変わることに注意が必要で、実際には表示価格より安く評価されることが多いのが現実です。

金融機関では融資審査で物件の現状資産価値を評価する際に積算法を使用します。積算法では以下の計算式が用いられます。

再建築価格×(残法定耐用年数÷法定耐用年数)

築19年の鉄筋コンクリート造で床面積1,000㎡の建物を例に計算すると、2億円×(28年÷47年)=1億1914万8936円となります。

しかし再建築価格に使われる平米単価は実情に合っていない場合があります。さらに地域差も考慮されていない状態です。実際に鉄筋コンクリート造の建築単価は、現在の首都圏では目安より高い水準となっています。

年次別指数法

建物を建てた年や当時の建築価額が分かっている場合に適用される方法です。新築した時点から現時点までの価格変動率を乗じて再調達価格を算出します。

この方法は「年次別指数法(取得価額法)」と呼ばれています。計算式は以下の通りです。

再調達価格=新築時の建築価額×価格変動率

年次別指数法の特徴は、実際の建築費用を基準とすることで、より現実的な評価が可能になることです。建築費用の変動を反映できるため、経済状況の変化に対応した評価額を算出できます。

建築資材の価格変動や人件費の上昇、技術革新による建築コストの変化などを適切に反映できる手法として注目されています。

概観法(新築費単価法)

建物を建てた年や当時の建築価額が不明な場合に用いられる方法です。建物に使われている材料や構造によって定められた1㎡あたりの標準的な単価である新築費単価に、建物の延床面積を乗じて再調達価格を算出します。

この方法は「概観法(新築費単価法)」と呼ばれており、計算式は以下の通りです。

再調達価格=新築費単価×延床面積

概観法は一般的に再調達価格を算出する際によく使われる方法となっています。建築時期や建築費用が不明な既存建物の評価において、標準化された単価を用いることで迅速かつ効率的な評価が可能になります。

この方法の利点は、複雑な計算を必要とせず、建物の基本的な情報があれば簡単に評価額を算出できることです。不動産査定や保険評価において広く活用されています。

なお火災保険などで再調達価格が使われる場合は、世帯主の年齢や家族構成などの情報が加味されることもあります。これらの要素を考慮することで、より実態に即した評価が実現されています。

建物再建築価格が用いられる場面

建物再建築価格は不動産の評価において重要な指標となります。金融機関の融資審査から保険の設定まで、様々な場面で活用されています。ここでは再建築価格が具体的にどのような場面で使われるかを詳しく解説していきます。

不動産査定

不動産査定では再調達価格が必須の要素となっています。銀行をはじめとする金融機関が不動産評価を行う際には「積算法」という計算方法が広く採用されています。

積算法は原価法とも呼ばれており、金融機関が建物の担保評価を実施する際の主要な手法です。実際の建築費用には材料費や内装費用、外構工事費など多岐にわたる項目が含まれるため、正確な計算は非常に困難となります。

そこで金融機関では以下の簡易的な計算式を用いて建物評価額を算出しています。

建物評価額=(再調達価格×建物面積×残耐用年数)÷法定耐用年数

この計算式により、建物の構造と築年数、延床面積の情報があれば簡易的に評価額を求めることができます。ここで再調達価格が重要な役割を果たしています。

ただし注意点として、再調達価格の基準単価は金融機関によって異なる設定となっています。そのため同一の建物であっても、評価を行う金融機関が変われば異なる評価額が算出される可能性があります。

火災保険

火災保険における保険金額は契約時の評価額を基準として設定されます。建物評価の方法は大きく分けて2つの基準があります。1つ目は再調達価額(新価)、2つ目は時価額です。このうち再調達価額の算出において再調達価格が使用されています。

再調達価額とは、保険対象となる建物と同等のものを新たに建築する際に必要となる金額を指します。構造や質、用途、規模、型、能力などが同じ建物の建築費用をベースとした評価額です。

再調達価額を基準とした保険金額を設定することで、火災などによる住宅損壊時にも損壊前と同等の住宅を再建するための保険金を受け取ることができます。時価額と比較すると保険料は高めに設定されますが、万が一のリスクに対する安心度は格段に向上します。

一方で時価額は、再調達価額から年数経過や使用による消耗分を差し引いた金額をベースとした評価額です。この場合、火災等で住宅が損壊した際に建築後数十年経過して劣化が進んだ住宅では、受け取る保険金が大幅に減額される可能性があります。結果として同等の建物を再建することが困難になるケースが多くなってしまいます。

相続税評価

相続税の計算において建物の評価額算出のために再建築価格が用いられています。相続財産の適正な評価を行うために、建物の再建築に要する費用を基準とした評価が実施されます。

相続税法に基づく建物評価では固定資産税評価額を基準として計算が行われることが一般的ですが、この固定資産税評価額の算出においても再建築価格が重要な要素となっています。

相続時の建物価値を正確に把握するためには、現在の建築費用水準を反映した再建築価格の理解が不可欠です。建物の構造や築年数、地域の建築費用相場などを総合的に考慮して適切な評価額が算出されます。

固定資産税評価

固定資産税の評価額算出において建物の評価額を算出するために再建築価格が用いられています。市町村が固定資産税を課税する際の建物評価において、再建築価格を基準とした計算が行われています。

固定資産税評価では建物の構造や建築年次、使用材料などを詳細に調査し、現在の建築費用水準に基づいて評価額が決定されます。3年に1度実施される評価替えの際には、建築費用の変動や技術革新などを考慮して再建築価格が見直されることになります。

このように再建築価格は不動産査定から保険、税務評価まで幅広い場面で活用される重要な指標となっています。

建物再建築価格の計算における注意点

建物の再建築価格を正確に算出するためには、複数の要素を総合的に考慮する必要があります。

構造や仕上げ材の違い、経年による減価、付帯費用の計上など、さまざまな要因が評価額に影響を与えるからです。適切な評価方法を選択し、必要な資料を準備することで、より精度の高い再建築価格の算定が可能となります。

再建築費評点基準表の活用

自治体によって呼び方は異なりますが、「固定資産評価点数表」や「再建築費評点数算出表」などの名称で再建築費評点基準表を入手できます。この表は建物の構造や仕上げ、設備などに応じて点数が設定されており、再建築費の算出に欠かせない重要な資料となります。

具体的な活用例として、外壁の仕上げ材によって点数が大きく変わることが挙げられます。

サイディングと比較して外装タイルの方が高点数に設定されている傾向があり、これが最終的な評価額に反映されます。契約時にこの表を取得しておくことで、償却期間の短縮や節税効果を得られる可能性があります。

建物の構造と経年減価

建物の構造は再建築価格を決定する重要な要素の一つです。木造と鉄筋コンクリート造では大幅に価格が異なるため、正確な構造の把握が必要となります。また経年による減価も考慮しなければならず、固定資産評価基準に基づいて経年減点補正率が適用されます。

ただし経年減点補正率には下限が設定されており、一定の年数を経過した後はそれ以上下がらないように制度設計されています。これは建物の最低限の価値を保護するための仕組みといえるでしょう。

構造と築年数を正確に把握することで、適切な評価額の算定が可能になります。

付帯費用の考慮

建物の再建築には材料費だけでなく、人件費や運搬費、諸経費などの付帯費用も発生します。これらの費用も再建築価格に含める必要があり、見落とすと評価額が実際より低くなってしまいます。

付帯費用の割合は建物の規模や立地条件によって変動するため、個別の事情を考慮した算定が求められます。

特に交通の便が悪い場所や特殊な工法を要する建物では、付帯費用の占める割合が高くなる傾向があります。これらの費用を適切に反映させることで、より実態に即した再建築価格の算出が可能となります。

評価方法の選択

再建築価格の評価方法には「年次別指数法(取得価額法)」と「概観法(新築費単価法)」があります。年次別指数法は新築時の価格と建築年を基に評価額を算出する方法で、実際の取得価額を反映できる利点があります。

一方の概観法は1平方メートルあたりの標準的な新築費単価や延床面積を基に評価額を算出する方法です。建物の特性や立地条件に応じて適切な方法を選択することが、正確な評価につながります。

どちらの方法も一長一短があるため、物件の性質を十分に理解した上で判断することが重要です。

固定資産税評価額への影響

建物の評価額は再建築価格に経年減点補正率を乗じて算出されます。物価変動によって再建築価格が変動することもあり、定期的な見直しが必要となります。

この評価額は固定資産税の課税標準となるため、適正な算定が求められます。

評価額の変動は税負担にも直接影響するため、正確な再建築価格の把握が重要です。市場価格の動向を注視しながら、適切なタイミングで評価の見直しを行うことが必要でしょう。

まとめ

建物再建築価格の正確な計算は、固定資産税の適正な算定や保険金額の設定において欠かせない要素です。

構造や仕上げ材、経年減価などの複数の要因を適切に評価することで、実態に即した価格算定が可能となります。

専門的な知識が必要な場合は、不動産鑑定士などの専門家に相談することをおすすめします。

THE GATE

不動産オーナーズクラブ「THE GATE」とは、投資不動産のオーナー及びこれから不動産投資を始めたい将来のオーナーに向けた有益な物件情報の配信と、当クラブ会員同士が成功ノウハウや情報交換を直接交わすことで不動産投資オーナー人脈を築けるコミュニティ運営を目的としています。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

良かったらSHAREお願いします
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
INDEX