不動産投資を成功させるためには、利回りに関する知識が欠かせません。しかし、表面利回りと実質利回りの違いやエリア別の相場など、覚えておくべき内容は多岐にわたります。
本記事では、不動産投資における利回りの基本から、エリア・物件別の利回り最低ラインや物件の見極めポイントなどを詳しく解説します。これから不動産投資を始める方は、ぜひ参考にしてください。
不動産投資における利回りとは
不動産投資の利回りには「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。
表面利回り(GROSS) | 実質利回り(NET) | |
---|---|---|
使われるタイミング | 物件比較の初期段階 | 購入や投資判断の最終段階 |
メリット | 計算が簡単で物件をザックリ比較できる | 実際の収益性を把握できる |
デメリット | 実際よりも高い可能性がある | 経費の計算が複雑 |
表面利回りと実質利回りは、目的に応じた使い分けが必要です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
表面利回り(グロス)
表面利回りとは、年間賃料収入を物件購入価格で割って算出される数値です。グロス利回りとも呼ばれ、賃料収入に対する投資額の比率を簡単に把握できます。
計算式は「年間賃料収入÷物件購入価格×100」です。
例えば、物件価格が4,500万円で年間家賃収入が250万円の場合、表面利回りは「(250万円÷4,500万円)×100=5.5%」となります。
表面利回りの特徴は計算の簡便性です。物件運営の経費や税金、空室リスクなどは考慮しません。
賃料と物件価格がわかれば簡単に算出できるため、不動産投資サイトや広告でも頻繁に使われています。
実質利回り(ネット)
実質利回りとは、表面利回りから各種経費を差し引いて、現実的な収益性を示す指標です。
ネット利回りとも呼ばれ、不動産投資の正確な収益性を把握する際に使われます。
計算式は「(年間賃料収入-年間経費)÷ (物件購入価格+諸経費)×100」です。
年間経費には主に次のような項目が含まれます。
- 管理費・修繕積立金
- 各種税金
- 保険料
- ローン事務手数料
例えば、物件価格が4,500万円で諸経費450万円、年間家賃収入が250万円で年間経費50万円の場合、実質利回りは「(250万円-50万円)÷(4,500万円+450万円)×100=4.4%」となります。
一般的に、実質利回りは表面利回りよりも2~3パーセント程度低くなります。
不動産投資の利回り相場と最低ライン
効率的な不動産投資を実現するためには、利回りの相場と最低ラインの把握が必要です。
エリア別、物件種類別の利回りと最低ラインを確認していきましょう。
エリア別の利回り相場と最低ライン
エリア別の表面利回り相場と最低ラインを詳しく見ていきましょう。
首都圏エリア
間取タイプ | ワンルーム | ファミリー向け |
---|---|---|
東京 城南地区 | 3.7% | 3.8% |
東京 城東地区 | 3.9% | 4.0% |
さいたま | 4.5% | 4.5% |
千葉 | 4.6% | 4.6% |
横浜 | 4.3% | 4.3% |
その他の主要エリア
間取タイプ | ワンルーム | ファミリー向け |
---|---|---|
札幌 | 5.0% | 5.0% |
仙台 | 5.0% | 5.0% |
名古屋 | 4.5% | 4.5% |
京都 | 4.6% | 4.6% |
大阪 | 4.3% | 4.3% |
神戸 | 4.7% | 4.7% |
広島 | 5.0% | 5.1% |
福岡 | 4.5% | 4.5% |
首都圏よりも、地方主要都市のほうが利回りは高めです。
地方都市は物件価格が比較的低いため、賃料収入に対する投資額の割合が高くなり、表面利回りが上がりやすくなります。
一般的には表面利回り5.0%が最低ラインと見なされますが、エリアの将来性や副業投資の場合は5.0%を下回っても問題ないケースがあります。
なお、ワンルームとファミリー向けの利回り差は、±0.1%以下です。間取りよりも、立地や物件価格が利回りに大きく影響していると考えていいでしょう。
物件種類別の利回り相場と最低ライン
物件種類別の利回り相場は、下表のとおりです。
種別 | 区分マンション | 一棟マンション | 一棟アパート |
---|---|---|---|
全国 | 6.62% | 7.51% | 7.99% |
北海道 | 11.73% | 8.96% | 11.60% |
東北 | 13.19% | 11.36% | 12.66% |
首都圏 | 6.03% | 6.55% | 7.32% |
信州・北陸 | 16.24% | 12.41% | 13.29% |
東海 | 8.04% | 9.47% | 9.26% |
関西 | 7.03% | 7.68% | 8.65% |
中国・四国 | 14.54% | 11.67% | 11.61% |
九州・沖縄 | 8.96% | 9.06% | 9.91% |
最低利回りは下表となります。
種別 | 新築 | 中古 |
---|---|---|
区分マンション | 4.0~5.0 | 5.0~8.0 |
一棟マンション | 6.0~8.0 | 8.0~10.0 |
一棟アパート | 5.0 | 7.0~10.0 |
利回りの相場や最低ラインはあくまでも目安です。投資目的や許容リスクに合わせて慎重に判断しましょう。
一戸建
東日本不動産流通機構「年報マーケットウォッチ2023年度」によると、首都圏で取引された一戸建の平均価格は3,928万円でした。成約賃料の平均は13.3万円です。
そのため、首都圏における戸建ての実質利回りは下記となります。
年間想定賃料159.6万円(13.3万円×12ヶ月)÷物件代金3,928万円×100=4.06%
高利回り物件のチェックポイント
高利回りであっても、実際の収益性を見極めるためには、物件の状態や契約内容を慎重にチェックする必要があります。
特にチェックすべきポイントは下記の3つです。
- 設備の状態
- 告知事項の有無
- 入居状況
それぞれ詳しく見ていきましょう。
設備の状態
築年が古い物件は設備の老朽化が進み、修繕に相当な費用がかかる可能性があります。
給排水設備は修繕履歴を確認して、近い将来における大規模修繕の必要性を判断しましょう。
給湯器やエアコンなどの設備は、入居者の満足度や物件の競争力に大きく影響します。現在の状態と設備交換費用の慎重な検討は不可欠です。
告知事項の有無
告知事項とは、物件の価値や入居者の生活に影響を与える事実や事件です。
売主や仲介業者には買主に対する説明義務があります。
4つの告知事項
- 心理的瑕疵物件内で自殺や他殺、変死など
- 物理的瑕疵建物の構造的な欠陥、雨漏りや水漏れの履歴、シロアリ被害、アスベストの使用など
- 環境的瑕疵近隣の嫌悪施設、騒音、振動、悪臭などの問題
- 法的瑕疵建築基準法、都市計画法、消防法のいずれかに対する違反
このような事実は、想定以上の入居率低下につながる可能性があるので注意が必要です。
入居状況
周辺エリアの賃貸需要も確認しておくと安心です。
例えば、大学や企業が近くにあるエリアは一定の需要が見込めますが、需要源が乏しいエリアは空室リスクが高まります。
低利回りでも価値がある物件の特徴
投資対象として価値がある低利回り物件の特徴は次の2つです。
- 立地が人気エリア
- 物件の状態が良い
それぞれ詳しく解説します。
立地が人気エリア
都心や駅近など人気エリアは物件価格が高く設定されていますが、賃貸需要の安定が期待できます。
立地が持つブランド力は、長期保有における安定収益の大きな要素です。
物件価格が下落しにくいため、売却時の出口戦略においても有利に働きます。
物件の状態が良い
築浅物件やリノベーション済みの物件は低利回りに見えますが、入居者からの人気は高く、空室リスクを下げられます。
外壁や共有部分のメンテナンスが行き届いている物件なら、将来的な修繕費の発生も少ないため、予想外のコストも防げるでしょう。
ターゲット層の幅広く、長期契約につながりやすいのも大きなメリットです。
不動産投資の利回りに関する注意点
利回りは不動産投資における重要な指標ですが、数字だけに頼って投資を判断するのは危険です。
利回りの数字を過信せず、総合的な視点で物件を評価する必要があります。
利回りだけで判断しない
高い利回りは魅力的に見えますが、背景に潜むリスクを見逃さないようにしましょう。
築年数が古く修繕費用がかさむ物件や、賃貸需要が低いエリアの物件は、表面上の利回りが高くても実際の収益は大きく下がる可能性があります。
利回りだけではなく、物件の管理状態や立地、周辺環境なども含めて総合的に判断しましょう。
事前にシミュレーションをする
シミュレーションを行う際には、年間家賃収入から経費を差し引いた実質利回りを算出しましょう。
表面利回りだけで考えると、実際のキャッシュフローと乖離が大きくなる可能性があります。
近隣の物件と比較する
同じエリア内の似たような築年数、間取り、設備の物件と利回りを比較しておくと、相場との差がわかります。
あまりにも相場と離れている場合には何か原因があると考え、不動産業者や専門家に相談したほうがいいでしょう。
周辺の賃貸物件の賃料水準も調べ、現在の賃料設定や将来的な賃料上昇・下落の可能性も予測しておきたいところです。
まとめ
不動産投資における利回りは、物件の収益性を測る重要な指標です。
表面利回りと実質利回りという2つの考え方を理解し、それぞれの意味や使い方を正しく使い分けることが、正確な投資判断の第一歩になります。
ただし、数字だけにとらわれないよう注意しましょう。設備の状態や入居状況、将来的な修繕リスクなどを含めて総合的に評価する姿勢が長期的な成功への近道です。
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